旅の迷人 第8日 7月8日(水) 2014年夏 フランス編 72年度生 桂 茂樹

充分な時間寝た筈なのにすっきりしない。ヴェルサイユの毒気に当てられたんやろか。わたしキラキラには向いてないんやろ。貧乏性やなー。よっしゃー、それなら今日は渋くフォンテーヌブロー城で勝負や。国電に乗って35分、バスに乗り換えて10分。田舎に着いた。あまり人はいてはらへん。元々ヴェルサイユ宮殿の様に賓客をもてなす為のものではなく、狩猟の時に泊まる別荘だったのを、歴代の王がだんだん自分や家族の部屋を継ぎ足していったものだから、各部屋には個々人の趣味が家具や装飾に強く反映されている。渋ささえ感じられる部屋もあります。だからと言ってお金をかけなかった訳ではなく、調度品、例えば椅子ひとつとっても素晴らしい物です。あの派手好きを絵にかいた様な皇帝ナポレオンの部屋の重厚さはどうでしょう。またプライヴェート部門だけでなく、共用部分にも、目を見張るものがあります。例えばフランソワ一世の回廊の両側に配された絵画や舞踏会の広間のフレスコ画がトレビアンなのは異論ありませんが、私は、ディアーヌの80メートルにおよぶ回廊の天井画と、三位一体修道会礼拝堂の壮麗さにも圧倒されました。3回往復してみました。
    
ディアーヌの回廊                三位一体修道会


表に出てみましょう。ベルサイユほど煌びやかではありませんが、ここにはヨーロッパ1の広さ(14ヘクタール)の花壇、緑の英国風景観庭園、池や運河の水、数多くののダイナミックな彫像があります。鳥が鳴いています。堪能しました。街に帰ってきてベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」でお馴染みのサン・ジェルマン・ドゥプレのサン・シュルピス教会に行って来ました。此処の内部には、「ヤコブと天使の戦い」等ドラクロワフレスコ画があります。私は、ドラ画伯はあまり鮮やかな色彩を使うわけではないので(フランス革命の戦う自由の女神は例外)、殆どコピーを持ってないのですが、やはり本物は迫力が違います。さすがはクロード・モネやオーギュスト・ルノアール(気障なようですが、外国の人を呼ぶ時。私は姓と名前を両方表わす事にしています。何故なら例えば日本語で「山下っ!」と言ったところで人々は誰のこっちゃ分からへんですが、「山下 清」と呼んで初めて、ああ裸の大将のことかと思わはんのです。同じように、ゴッフォと言ったってあほほどのゴッフォがいてはります。ヴィンセント・ヴァン・ゴッフォとまではいう必要はないでしょうが、ヴァン・ゴッフォと呼ぶ癖をつけた方が、欧米人との会話はスムーズに進行します。もちろん例外はあります。ここのドラクロワがそれです。彼の場合ドラクロワと言ったら、有名なのは彼しかいないのしょう。ちょうど日本で芥川と言ったら芥川龍之介を指すのと同じです)の敬愛を一身に集め、ロマン主義印象派の垣根を越えて、心の師と慕はれただけあります。感心しながら表に出ると、瀬戸?物と言ってええんでしょうか、陶器市をやっていました。さすがは芸術の中心。ええもんが揃ってました。よっぽど求めようと思いましたが、重いのとフラジャイルなので諦めました。残念!             (了)